NYの花

 パリ、ロンドンは何度か訪れているせいか、自分なりにその国の花のスタイルを思い描くことができます。でも、NYの花はどんなもの? と聞かれるとうまく説明できない、イメージをつかみきれない…。

 だから、どうしても行きたかったニューヨーク取材。次号(2004年2月16日発売)ベストフラワーアレンジメント3周年記念号の取材のために、念願のマンハッタンのお花屋さん巡りをしてきました。

 NYを訪れてまず思ったこと、花の職業にもいろいろあるんだなぁ、ということ。街角にあるのはフラワースタンド。たいていはスーパーマーケットの一角にあり、花の値段も安い。日本のスーパーで売っているお花屋さんと同じですね。

 もうひとつはこだわりがあるお花屋さん。でも、ロンドンやパリと決定的に違うのは、ビジネスの柱としてイベントが重要な収入源になっています。パリでは日常生活の中で花を贈りあう習慣があるため、一般人が顧客対象になります。でも、NYとくにマンハッタンでは人々の多くは狭い家に住んでいるし、花を飾ることは残念ながら日常的なことではない。しかし、この街はとにかくパーティなどイベントが盛んで、毎週のようにクラブやレストランなどでは人々が集い、何かしらのイベントやパーティが行われ、そこでは人々に「見せるための花」が求められているのです。

 そして3つめのスタイルはお店を持たず、アトリエとかスタジオとかを構えている人たち。この人たちは主にイベントなどの花装飾やセレブの人々の花飾りをしています。NYではいわゆるこのスタジオタイプのフローリストがとっても多いのが特徴です。

 で、恐れずに独断的で大雑把な言い方をすると、マンハッタンの花スタイルはゴージャスでアーティスティックなものが多い。色使いも原色同士を組み合わせて、刺激的でインパクトの強いものに仕上がっています。「見せるための花」なのですから、必然的にそうなるのでしょう。
 
 ここまで書くと、NYの花を気に入らなかったのか…と思われそうですが、そんなことはありません。NYの花はもっと人間的で奥深い魅力がありました。都会の花らしく刺激的で、洗練された美を尊び、そして何よりもそこはかとないセクシーさがポイントなのです。それはどこかNYの女性と共通しています。

 その国の花屋さんとか花のスタイルを観察すると、いろんなことが見えてきます。人々はどんな生活をしているのか、社会構造はどうなっているのか、人々はどんな色を好み、どんな雰囲気を求め、何を大切にし、何を優先しているのか…。花は暮らし、ファッション、芸術、経済と深く結びついているから、ちゃんと向き合うとさまざまなことが垣間見えてくるのです。

 花は文化なのだ…と私はいつも思います。