パリ 花と香りとポエム

2005年8月16日発売のベストフラワーアレンジメントの最新号、バラ特集号はいかがでしたか?
ベストフラワーアレンジメントにはあえて編集後記というスペースをつくっていません。ときどき、「編集後記があった方が作り手の気持ちが伝わるのでは?」という御意見もいただきますが、言葉は限界があって、1冊にかける思いや怨念?(笑)が、ともすれば薄くなってしまいそうで、今だに編集後記をつくることができないでいます。でも、本誌ではスペースの関係上書き切れなかったこと、もっと伝えたいことなどを、この場をお借りしてみなさまとシェアしていきたいと思います。


今日のテーマは「花の香りとポエム」について。

秋号のバラ特集の取材のために、パリへ飛びました。
本誌P64に掲載している「オドラント」というお花屋さんは、とくにファッション業界で人気の高いお花屋さんです。
誌面でも書いたように、オドラントは香りという意味。お店の8割の花は香りのあるものです。
さらにP58で御紹介しているお花屋さん「オーノンドゥラローズ」はバラの専門店ですが、この店にも「香りのあるバラ」のコーナーがありました。パリでは今、花の香りというものに再度注目が集まり、それが付加価値になりはじめているところ。


一方、日本の花業界でも同じような動きがでてきています。P154で特集しましたように、「今、人気のバラは何か」を探るために、お花やさん、卸し、生産者、種苗会社の方々にアンケートをお願いしてその結果を発表したのですが、「次にどんなバラが流行りそうですか?」との問いに対して、かなり多くの方が「香りのあるバラが来そう」・・と答えていました。

ところで、バラから香りが消えたのは、いったいいつのころからでしょうか? 
私が子供のころは、お花やさんで買ってきた花には必ずそれぞれの香りがあり、香りがなくなると、子供心にこの花が枯れちゃうと思い、あわててお水をあげたりして心配したものでした。

花の香りが注目されれば、花の生命力を香りでも感じてもらえるし、見た目の美しさだけでなく、五感で花を楽しむ人がふえてくると思います。
それは大、大歓迎!
ちょっと変に聞こえるかもしれませんが、花に注意を向ければ、花は必ずこたえてくれます。花の生命力は注意を向けないと気がつかないけれど、感じ取れるとそれはとっても優しいエネルギーで、人の感情を浄化する特別な力があると、私は信じています。


さて、話しを戻し、パリの香りの花にこだわるオドラントですが、誌面では御紹介できなかったことがあります。この店で花束を注文すると、一枚のポエムがついてくるのです。
ポエムといってもカードに書いてあるのではなく、コピー用紙を四つにざっくり切って印刷されているだけの、大変シンプルなものです。

取材した日のポエムはこのような、シンプルなものでした。


バラの花びらが
はらはら落ちた
「魂」という名の美しさが
こぼれたかのように
1枚の花びらが静かに落ちた


ポエムは1ヵ月に一度変わるとのことでした。
顧客には、このポエムが気にいってコレクションしている人もいるそうです。
美しいバラと、豊かな香りと、ロマンティックなポエムを贈る・・・・
花を贈るということは、美と、感覚と、知性を同時に贈れるものだと、パリの花屋さんはあらためてそれを教えてくれました。